ずとまよの『正義』の歌詞を考察

最近、歌を聴きながら、その歌のイメージに合わせた絵を描くことにハマっています。

ずっと真夜中でいいのに。の『正義』はMVの革蝉さんの絵が好きで聴き始めました。
この曲は私が最近の音楽を聴くきっかけになった曲で、そのMV、フレーズや音は本当に大好きです。
あわや神聖視してしまっているせいか、『正義』のイメージから絵を描くことができず、数年を過ごしています。

普段はメロディーと歌詞の大まかなイメージから絵を描くのですが、今回は歌詞をいつもより深く考察して描こうと思いました。

 

ということで本題、私なりの解釈を書いていきます。
行間をこれでもかというほどに読んでいきます。

大まかな解釈

登場人物

 「僕」…君といた頃の主人公

 「君」…僕とは親しかったけれど、亡くなってしまってもう会うことは叶わない

 「今の僕」…君と僕、二人の様子を回想している

伴奏のリコーダーとアヒルの声から、昔の『君』と『僕』は幼い印象を受けました。

この歌は、時が経って成長した『僕』が今は亡き『君』との思い出を何度も思い起こしている歌だと思っています。

『僕』は独りで思い出の中の君を抱えていて、『君』のことを忘れて前進する事ではなく、何度も思い出しては守り続けることを「正義」と信じている。
そのせいで思い出を擦り、どんどん『君』のことを(姿や声までも)忘れて分からなくなっていって、『君』はもちろん思い出でしかないから分かり合えることもなくて、そんな進展のない状況下で自分自身もが歪んで分からなくなっていった歌だと思います。
思い出だけを糧に自分を成して生きる『僕』の物語なのかなと解釈しました。

 

昔の僕と君を回想

 

つま先だって わからないのさ
そっと芽を合わして仕舞えば
仕舞うほど花びら散って
ただ体育座りして 抗ってる君と並んで
手を振る今日は 僕と君に近づきたいから

 

「つま先だってわからないのさ そっと芽を合わして仕舞えば 仕舞うほど花びら散って」
 君のことが全くわからない。出会った頃(芽)は二人は一緒だった。
その頃の思い出を心の奥で大切に仕舞っていればいるほど、時が経って独りになった今(花)は悲しく思えてしまう。

「ただ体育座りして 抗ってる君と並んで」
 孤独に抗って寂しげに俯きながら体育座りしている君。その横に並んで座って、僕は君のことを分かろうとしていた。
「手を振る今日は 僕と君に近づきたいから」
 今日の僕は、挨拶代わりに手を振ってみる。過去の僕と君との思い出に触れていたいから…。

 

赤い瞳が ぼやける音
耳障りな声で 君と歌うけれど
深い昼寝の温度に慣れてくの?
飛び跳ねた笑みだけ 間違いそうもなくて

 

「赤い瞳がぼやける音」
 寂しくて泣いて赤くなった君の瞳が、僕も泣いてしまったせいでぼやけてしまう。

「耳障りな声で君と歌うけれど」
 今は独りぼっちだから自分の声はよく聞いている。だから、自分の耳障りな声で、君の声をだんだん忘れていってしまう。二人で歌った思い出を思い出すたびに。

「深い昼寝の温度に慣れてくの?」
 でも昼寝の温度みたいに心地よくて、君と僕の穏やかで楽しい思い出が、慣れてしまうほどに今の僕を包み込んでいる。

「飛び跳ねた笑みだけ間違いそうもなくて」
 これだけ君の姿も声もぼやけているけれど、あの笑顔だけは間違いそうもないや。

 

ただ 思い出して 終わらないで
抱きしめたいように
容易い笑みじゃ 纏めきれぬほどに
ただ はしゃいだって 譲り合って さよならさ

 

「ただ思い出して終わらないで」
 ただ思い出すだけで終わりたくない、

「抱きしめたいように 容易い笑みじゃ纏めきれぬほどに」
 思い出の中の笑顔じゃこの気持ちがまとめきれないくらい、抱きしめたい。そして本当の君の温度を感じたい。

「ただはしゃいだって 譲り合って さよならさ」
 思い出の中でははしゃいで笑っているけれど、君も僕もお互いに自分の言いたい事を引っ込めて(譲り合って)しまって、何も分かりあえない。
そのまま、ただの思い出だから、さよならしてしまう。

 

出遅れた言葉 誓って
冷めた皮膚だけ継ぎ足して
生かされてた 浅い声の正義であるように

 

「出遅れた言葉誓って」
 言えなかった言葉、分かり合えなかった事実を自分の中に刻んで

「冷めた皮膚だけ継ぎ足して」
 君の体温はずっと昔に触れたきりだから、時と共に冷め切ってしまった。けれど、その感覚をずっと思い返して

「生かされてた浅い声の正義であるように」
 君の声を忘れないように耳障りな自分の声を殺して、言葉が出ずに分かり合えなかった事を後悔し続けて、君を忘れて前へ進む事を拒んで、そうやって昔の君を守り続けている。
それが僕の正義で、僕は思い出に生かされている。

 

近づいて遠のいて 探り合ってみたんだ
近づいて遠のいて わかり合ってみたんだ
近づいて遠のいて 笑いあってみたんだ
近づいて遠のいて 巡り合っていたんだ

 

「近づいて遠のいて…」
 君と僕の思い出を何度も思い起こしているんだ

 

今の僕が思っていること

 

そっと揺り起こしても 何も変わらぬ存在を
大切に しすぎてしまうから
きっと これから先 もっと綺麗な文字で
拾い集めるんだろうな

 

「そっと揺り起こしても何も変わらぬ存在を 大切にしすぎてしまうから」
 そっと揺り起こしても変わらないような、昼寝の温度のような存在を、ずっと長く大切にしすぎてしまっているから 

「きっとこれから先もっと綺麗な文字で拾い集めるんだろうな」
 きっとこれから成長して言葉を沢山覚える僕は、君や君との思い出をもっと綺麗な形で思い起こせるんだろうな

 

悪いこと してなくても
秘密を隠し通すことが 正義なら
青い風声鶴唳 押し込んで
いつでも帰っておいでって
口癖になってゆくんだ

 

ただ 思い出して 終わらないで………

 

「悪いことしてなくても秘密を隠すことが正義なら」
 君との思い出を大事に仕舞って隠すことが正しいのなら、

「青い風声鶴唳(ふうせいかくれい)押し込んで」

 少しのことで驚くような幼い頃の感覚を、思い出と一緒に心に仕舞って、

「いつでも帰っておいでって口癖になってゆくんだ」
 あの頃の僕に「また会いたい」って、君に伝えさせるんだ。
 それが僕が言いたかった、出遅れた言葉だから、もう君に伝わらなくてもずっと言ってしまうんだ。

 

夢の話

なんども話そうと
なんども瞑ろうとしても
途端に真っ白くなって
途端に伝えすぎちゃうね

 

「なんども話そうとなんども瞑ろうとしても」
 君と思い出の中で何度会って話そうとしても、何度思い起こすことをやめようとしても

「途端に真っ白くなって 途端に伝えすぎちゃうね」
 何をしようとしても頭が真っ白になって、君に言いたかったことを全部言ってしまうね

 

今は単純に散々に願うのさ 傲慢でも精一杯の
「うんうん。」って君と僕で
喋ったね、夢の話で
くすぐったい笑みで今は全て

 

「今は単純に散々に願うのさ 傲慢でも精一杯の」
 今は子供みたいに精一杯に願うんだ

「「うんうん。」って君と僕で 喋ったね、夢の話で」
 君と僕が会える、夢のような話を。

「くすぐったい笑みで今は全て」 
 そんな話を思い出の中の君とできて、今は幸せで胸がいっぱいで。

 

どんどん忘れてぼやけていく君の形

 

まだ 聞こえないで 終わらないで
抱きしめたいように
小さくなった声に 嘘がないように
ただ はシャイいだって 笑いあって さよなら差?

 

「まだ聞こえないで終わらないで」
 まだ君の声が聞こえない間に、思い出すことをやめないで

「抱きしめたいように 小さくなった声に嘘がないように」
 遠くなった声が本当の君の声であるように、抱きしめたい。近くで声を聞きたい。

「ただはシャイだって 笑いあって さよなら差?」
 シャイな人みたいにお互い笑いあって、もうお別れ?

 

手遅れた言葉 誓って
冷めた皮膚だけ継ぎ足し手
生かされてた 浅い声の正義であるように

 

「手遅れた言葉誓って」
 「会いたい」なんて言葉は手遅れだって気付いて、

「冷めた皮膚だけ継ぎ足し手」
 何度も継ぎ足した僕の手の温度で、冷めきった君の体温が消えていって

「生かされてた浅い声の正義であるように」
 それでも僕は、今にも忘れてしまいそうな君に生かされている。浅い声で叫ぶ弱々しい正義のように。

 

近づいて遠のいて 探り合ってみたんだ
近づいて遠のいて わかり合ってみたンダ
地下着いて 問い解いて 笑いあってみタンダ
チカヅイテ トーノイテ 巡り合っていたんだ

チカヅイテ トーノイテ サングリアッテミタンダ
チカヅイテ トーノイテ ワカリアッテミタンダ
チカヅイテ トーノイ十 ワライアッテミタンダ
チカヅイテ 十ー退イテ 巡り合ってみたんだ

 

「チカヅイテ十一退イテ巡り合ってみたんだ」
 不安定な君の形を何度も思い出して、どんどん君がわからなくなっていく。
歪んで遠退いていく君と同じように、思い出に生かされている僕自身もまたわからなくなっていく。
分からない者同士ならつま先ぐらいは分かり合えると思って、また巡り合ってみたんだ。

 

 

 

ずっと真夜中でいいのに。『正義』MV - YouTube